この住宅は、日本のこころを謳うことをテーマに、日本建築の伝承を意識して計画された。玄関アプローチに日本の路地空間を再現し、半外部としての空間をつくり出した。また、伝統的な大和葺き
を取り入れた屋根は、ゆるやかで安定感のある2.5寸勾配の銅版葺きとし、軒は1.5mとできる限り深くしている。この軒下の空間により、和室から広縁、さらには庭へと続く一連の空気の流れを豊かに表現することができた。広縁の建具は、障子・ガラス・網戸・雨戸の合計8本が戸袋に収納でき、広い開口部を演出している。暗くなりがちな中廊下と階段部分には行灯をイメージした照明を設置し、昼間はトップライトの役割をも果たしていて、この家のアクセントともなっている。
旧軽井沢の閑静な敷地に立つ老朽化した大学寮の建て替え計画。
設計の大きなポイントは、現存する樹木を一本も切らずにその間隙を縫ってプランを展開したこと。そして、玄関ホールをこの建物の“へそ”と捉えたことである。建物全体に中心性を持たせるその空間は、無目的な空間として“ゆとり”や“間”を演出している。建前としては、玄関ホール・団らんの場・アトリエ・ギャラリーなどの利用を想定。また、開口部には深い庇と大きいはね出しのバルコニー、広いテラスを設け、内と外の中間領域の演出を強く意識した。時には記念撮影の場・団らんの場となるこの中間点の場は、夏になると室内以上に有効に使われている。