本来、美術館は芸術作品を収蔵・展示することが主な目的であって、建築は脇役に徹しなければならない。しかし、人が訪れて快く美術品を鑑賞できるようにすることも、重要な機能であるので、建築を一つのパフォーマンスとして捉え、さまざまなストーリーを描き出していった。
まずは、美術館までの長いアプローチ。日本の神社仏閣に見られる、雑念を浄化し精神の緊張感を生み出す長いアプローチの概念を取り入れ、これから美術作品を鑑賞する心の高まりと期待感をあたえる演出を試みた。さらに、ケヤキの並木道を通り抜けると彫刻プロムナードが待ち受け、大和葺きの銅版屋根がやさしく迎え入れてくれるプラザへと続いている。入口は極端に狭く絞り込んであるが、それは明るい外部から無窓の内部空間に導入するための、光を調整する役割を果たしている。
また、エントランスホールの大空間をより強調する、いわば空間のリズムをつくり出すことも意図している。天井高9m、四国の由良石貼りによって石窟寺院や神殿をイメージしたホールには、名画3点と彫刻が無料で公開されており、開かれた美術館を目指す目玉ともいえる空間である。