この住まいの一番の特徴は、丸い窓と広々とした土間です。
ファサードを印象づける大小の丸窓が、建物の印象を和らげ、住まう人も訪れる人も優しく迎えてくれます。
道からの視線が入る一番大きな窓には、縦格子の室内建具を付け、プライバシー性も地域とのつながりも両立できる仕組みになっています。
玄関に広めの土間を設けることで、外と内をつなぐ柔らかな緩衝空間としました。
上部には吹き抜けを計画し、自然光をたっぷり取り込むことで、家に入った瞬間から明るく、のびやかな雰囲気を感じていただけます。
木組みをあらわすことで、構造の力強さと木のあたたかみが同時に伝わるよう意図しました。
土間は洗い出し仕上げとし、落ち着きのある質感と同時に、お手入れもしやすくしています。
内部の仕上げには自然素材を積極的に取り入れています。
床には無垢材を使用し、リビングの天井も板張りとすることで、自然に包まれるような心地よさを感じられるようにしました。
壁や外壁にはぬりかべを採用し、光の当たり方によって表情が変わる、やさしい質感を楽しめます。木の造作家具を取り入れ、手に触れるものにも安らぎを与えました。
日々の暮らしやすさにも工夫を重ねています。
収納は量を十分に確保し、扉をカーテンにすることで開け閉めがしやすく、空間も軽やかな印象に。
階段はゆるやかな勾配にして、安心して上り下りできるよう日常の動作に寄り添いました。
洗濯動線も、洗う・干す・取り込む・しまう、という一連の流れができるだけ短くなるように配置しています。
外部の屋根付物干スペースで干した後は、そのまま近くの収納にしまえるため、家事の負担を減らし、毎日の暮らしを快適にしています。
道路と隣地マンションから視線を遮る位置に中庭を計画しました。
木を植え、庭には芝を敷くことで、視線を気にせず自然と触れ合える場をつくりました。
中庭の木は家の中からも眺めやすい位置に植え、シンボルツリーとして生活に安らぎを与えます。
家族だけでなく、ワンちゃんにとってものびのびと過ごせる居場所になっています。
光や風の取り込み方、素材の選び方、そして暮らしやすさへの細やかな工夫が、この住まい全体に息づいています。
50代で住まいを新しく築かれるという大きなご決断の背景には、
ご夫婦で過ごされる時間を大切にしたいという想いが感じられ、お互いを尊重している姿がとても素敵だと思いました。
その想いに寄り添うように、住まいもまた歳月を重ねながら、よりあたたかな空間へと育っていくことを願っています。
竣工:2025年
担当:小倉







